「仕事内容より人間関係がつらくて辞めたい」
看護師の退職理由の上位に必ず入るのが人間関係です。ピリピリした先輩、聞こえよがしの陰口、質問しづらい空気。「私のコミュニケーションが下手だからかな」と自分を責めている人も多いと思います。
私は都内の大学病院のICU・CCU・救急救命で12年、治験コーディネーター(CRC)として12年、そして今はケアマネジャーとして働いています。4つのまったく違う職場で働いてきてはっきり言えること。
人間関係の悩みの多くはあなたの性格の問題ではなく、職場の「構造」の問題です。そして職場を変えると、人間関係の質は本当に変わります。
なぜ病棟の人間関係はこじれやすいのか
まず、病棟の人間関係がきつくなりやすいのには理由があります。あなたが悪いのでも、先輩が特別意地悪なのでもなく、こじれやすい条件がそろっているのです。
- 命を扱うプレッシャーが常にあり、ミスへの緊張感が人への当たりの強さに変わりやすい
- 夜勤で全員が慢性的に疲れている。疲れた人間は余裕をなくします
- 閉鎖的な空間で同じメンバーと長時間過ごす。逃げ場がありません
- 先輩・後輩の上下関係が強く、指導と圧の境目が曖昧になりやすい
私もICU時代、決して人間関係が得意なほうではありませんでした。でも今振り返ると、あの環境で常に和やかでいるほうが難しかったと思います。「職場でうまくやれなかった」ことと「あなたに人間関係の能力がない」ことは、別の話です。
3つの職場で人間関係はこう違った
転職して驚いたのは職場が変わると人間関係の「質」そのものが変わることでした。それぞれの実感を正直に書きます。
病棟(ICU・CCU・救急):緊張感が人間関係に染み出す
急性期の現場は一瞬の判断ミスが命に関わります。だから指導は厳しく、空気は張り詰めます。同期や気の合う仲間との結束は強くなる一方で合わない人とのすれ違いも増幅されやすい。濃い人間関係が良くも悪くも凝縮された環境でした。
治験CRC:「大人の距離感」に驚いた
CRCに転職していちばん驚いたのが人間関係でした。相手は医師、製薬会社のモニター、検査部門、被験者さん。社外の人と仕事のルールに沿って関わる場面が多く、感情より段取りで動く世界です。ビジネスマナーベースの「大人の距離感」があり、病棟のような濃密な上下関係のストレスはほとんどありませんでした。
もちろん調整役として板挟みになる大変さはあります。でもそれは「関係がこじれるストレス」ではなく「仕事の難しさ」で、質がまったく違いました。
ケアマネ:年齢層が高く、担当制の個人プレー
今働いているケアマネの世界は同僚の年齢層が高く(40代でも若手です)、落ち着いた人間関係です。担当制の個人プレーが基本なので、チームの輪に入れないという類の悩みはそもそも起きにくい。その代わり、事業所や利用者さんのご家族との外向きの調整が人間関係の中心になります。
辞める前に試してほしいこと
「人間関係がつらい=即転職」と言いたいわけではありません。動く前に確かめてほしいことがあります。
- つらさの正体を言葉にする。特定の人なのか、職場全体の空気なのか、業務のプレッシャーなのか。特定の人が原因なら部署異動で解決することもあります
- 師長や信頼できる先輩に一度は相談する。言いにくいことですが、環境調整は管理者の仕事です
- 心と体に出ていないか確認する。眠れない、食べられない、出勤前に涙が出る。そのサインが出ているなら我慢を続けるのは危険です。休職や退職を「逃げ」と思わないでください
そのうえで「この構造は変わらない」と判断したなら、職場を変えることは立派な解決策です。
「人間関係で辞める」は逃げではない
「人間関係で辞めるなんて、どこに行っても同じだよ」と言う人がいますが、私はそうは思いません。
実際に4つの職場を経験して人間関係のストレスの量も質も職場によってまるで違いました。病棟でうまくいかなかった人がCRCで穏やかに働けることも、少人数のクリニックが天職になる人もいます。「どこに行っても同じ」ではなく「どこに行くかで変わる」が、私の結論です。
大事なのは人間関係から逃げることではなく自分に合う人間関係の「形」を選ぶこと。濃い結束の中で働きたいのか、大人の距離感で働きたいのか、個人プレーが楽なのか。それは性格の優劣ではなく向き不向きです。
病棟以外の選択肢は病院を辞めても大丈夫/看護師の働き方9選に、辞めて後悔しないための考え方は看護師を辞めて後悔した人・しなかった人の違いに書いています。
あなたが自分を責める時間を自分に合う環境を探す時間に変えられますように。この記事が分岐点のヒントになればうれしいです。


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