
「治験で入院すると、どんな生活になるの?」
「投薬日には、どのような検査を受けるの?」
第Ⅰ相治験の入院生活は、「投薬日」と「それ以外の日」で大きく異なります。
投薬日以外は比較的自由に過ごせますが、投薬日は治験薬の服用後から採血、血圧、心電図などが決められた時間に行われます。
そしてここが勘違いされがちですが、スクリーニング検査をクリアして入院しても必ず治験薬を投与されるとは限りません。
投薬前(プレ)の検査結果によって、投薬予定者と補欠者が入れ替わることがあります。
私は健康成人を対象とする第Ⅰ相治験の施設で、院内CRCとして12年間働きました。
この記事では、私が勤務していた施設での経験をもとにスクリーニング検査から入院、投薬日、退院から事後検査までの流れを紹介します。
試験や施設によってスケジュールや入院中の決まりは異なりますが、第Ⅰ相治験の入院生活を知る参考になれば幸いです。
第Ⅰ相治験は健康成人男性が対象になることが多い
第Ⅰ相治験は開発中の薬を人に投与し、安全性や体内での薬の動きを確認する試験です。
少人数の健康な成人を対象に、少ない量から投与する試験が多く行われます。
私が勤務していた施設は健康成人男性を対象とした入院試験が中心でしたが、男性だけでなく女性や高齢者、日本に住む外国人(主に白人)が参加することもありました。
スクリーニングから投薬までの流れ
治験に参加するには最初に治験の目的や検査内容、予想される副作用などの説明を受けます。
内容を理解して同意文書に署名したあとスクリーニング検査へ進みます。
スクリーニングでは、診察や採血、採尿、心電図などを行い試験ごとに定められた参加条件を満たしているか確認します。
検査にパスすると晴れて入院となりますが、入院が決まっても必ず治験薬を投与されるとは限りません。
私が勤務していた施設では投薬する人数より3人くらい多めに入院してもらい、1名が入院当日に帰宅し(当日帰り)、2名程度が補欠として待機していました。
投薬前に最終の検査(採血や心電図、血圧測定など)を行い、このプレの検査結果で投薬予定者と補欠者を入れ替えることもあります。
最終的に医師が問題ない、と判断した人に治験薬が投与されます。
投薬日の1日は分刻みで進む
試験によって内容は異なりますが、おおまかな流れは次のとおりです。
| タイミング | 被験者さんの過ごし方 |
|---|---|
| 起床後 | 体調確認、検温、血圧測定、尿検査 |
| 投薬前 | 採血や心電図 |
| 投薬時 | 決められた時間に治験薬を投与する |
| 投薬後 | 繰り返し採血や心電図などを受ける |
| 検査の合間 | ベッドや病室で安静に過ごす |
| 検査終了後 | 食事をとり、体調確認を受けながら過ごす |
投薬後は治験薬が体内でどのように変化するのかを調べるため、決められた時間に何度も採血を行います。
私が勤務していた施設では、被験者さんごとに2分ずつ時間をずらして投薬と採血をしていました。
採血や心電図の回数が多い時間帯は、被験者さんも自由に動くことができません。
食事や水分、トイレ、姿勢などに決まりが設けられることもあります。
検査の間隔が空いてくると少しずつ自由に過ごせる時間が増えていきます。

投薬日以外は自由時間が多い
投薬日以外は決められた検査や体調確認を受けながら、比較的ゆっくり過ごします。
私が勤務していた施設では起床は8時、消灯は22時でした。
食事や検査の時間は決まっていましたが、それ以外は自由時間です。
ただし普段どおりに何でもできるわけではありません。
私が勤務していた施設では歯磨き粉やシャンプーは施設で用意したものを使用していました。
リップクリームや化粧水など、使用可能か確認が必要な場合もあります。
飴やガムなどの持ち込みもできません。
こうした決まりは治験薬以外のものが検査結果に影響することを防ぎ、正確なデータを得るために設けられています。
治験被験者の1日を支えるCRCの仕事
投薬日には、治験実施計画書で定められた時間に採血や心電図などを行います。
検査ごとに実施できる時間の範囲が決められているため、CRCには正確な時間管理が求められます。
私が勤務していた施設では、業務前に時報で秒単位で正確に時間を合わせて、共通のストップウォッチを首から下げて時間を管理していました。
採血がうまくできず時間がかかりそうなときはナースコールを鳴らしてほかのスタッフに応援を頼みます。
血中濃度が半減期を迎えるまでは1分の遅れも許されないくらい、採血の時間は大事です。
心電図もただ測定できればよいわけではありません。
電極の付け間違いや波形の乱れがないよう、解析に使用できる正確なデータを残します。
CRCは被験者さんの体調や入院生活に配慮しながら検査時間とデータの正確さを守る仕事です。
CRCの投薬日の詳しい仕事内容は、【CRCの投薬日の仕事|朝が早い理由と1日の流れ】で紹介しています。
治験の謝礼はいくら?私の施設では1泊2万円程度
治験に参加すると謝礼が支払われます。
私が勤務していた施設では、スクリーニング検査は1万円程度、入院試験は1泊につき2万円程度が目安でした。
もちろん負担軽減費の金額だけで参加を決めるのではなく、検査内容や入院期間、治験薬によるリスクを理解したうえで判断することが大切です。
退院後も事後検査を受ける
予定された検査が終了し医師が体調に問題がないと判断すると退所になります。
ただし、退所したら治験がすべて終わるわけではありません。
後日決められた日に施設を訪れ、事後検査を受けます。
事後検査では、診察や採血、採尿、心電図などを行い、治験薬を使用したあとに体調や検査値の変化がないか確認します。
事後検査が終了するまでは退院後も服薬や飲酒、激しい運動などに制限が設けられる場合があります。
事後検査を終えると治験参加は終了です。
第Ⅰ相治験の入院についてよくある質問
入院中にスマートフォンは使える?
自由にスマートフォンを使える場合が多いです。
私が勤務していた施設には無料Wi-Fiがあり、被験者さんは動画を見たり、ゲームをしたりして過ごしていました。
ただし通話や写真撮影、使用できる場所については施設ごとに決まりがあります。
入院中に外出できる?
原則として自由に外出できません。
外出先での食事や運動などが治験データに影響する可能性があるためです。
入院中は施設内で決められた生活ルールを守って過ごします。
入院すれば必ず治験薬を使用する?
入院しても必ず治験薬を使用できるとは限りません。
投薬前の検査結果や当日の体調によっては、投薬予定者と補欠者が入れ替わることがあります。
補欠として入院し、投薬を受けずに退院する場合もあります。
治験薬を使用したあとに体調が悪くなったら?
入院中はすぐに医師や看護師、CRCへ伝えます。
退院後に体調の変化を感じたら自己判断で様子を見ず、案内された連絡先へ相談します。
治験薬との関係がわからない症状でも早めに伝えることが大切です。
まとめ|投薬日は検査が多いが、それ以外は自由時間が多い
スクリーニング検査をパスし入院しても、必ず治験薬を使用できるとは限りません。
投薬前の検査結果や当日の体調によっては補欠者と入れ替わることもあります。
投薬日は治験薬の投与や採血、心電図などが決められた時間に頻回に行われます。
一方投薬日以外は比較的自由に過ごせますが、食事や持ち込み物、使用できる日用品には細かな決まりがあります。
退院後も事後検査を受け体調や検査値に変化がないことを確認して治験は終了します。
治験への参加を考えている方は、負担軽減費の金額だけで判断せず検査内容や入院期間、予想されるリスクについて十分な説明を受けてください。
わからないことや不安なことがあれば同意する前に医師やCRCへ確認することが大切です。
私は院内CRCとして12年間、第Ⅰ相治験に関わってきました。
この記事が、治験の入院生活や投薬日の流れを知るきっかけになれば幸いです。
CRCの仕事内容全体を知りたい方は、【治験コーディネーター(CRC)とは?仕事内容と1日の流れ】も参考にしてください。


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