治験看護師(CRC)の仕事内容と1日の流れ|第I相施設で12年働いた私のリアル

治験CRC

はじめに

「治験の看護師って実際なにをしてるの?」転職を考え始めた頃の私もまったくイメージが湧きませんでした。

こんにちは、めぐみです。私は大学病院のICU・CCU・救急救命で12年働いたあと、系列クリニックを経て治験コーディネーター(CRC)として第I相の治験施設で12年働きました。

この記事では私が実際にやっていた仕事の中身と1日の流れをできるだけリアルにお伝えします。

前提:私が働いていたのは「I相」の治験施設

治験にはⅠ相〜III相があり働く場所によって仕事内容がかなり違います。私がいたのは第I相、つまり健康な成人の方に協力してもらう段階の専門施設です。

I相施設の仕事は大きく分けて「スクリーニング(外来)」と「入所(病棟)」の2つにわかれます。私はスクリーニングも入所も担当していました。

スクリーニング外来の仕事・1日最大4試験 20人をさばく流れ作業

スクリーニングとは治験に参加できるかどうかを検査で確認する外来のことです。募集人数の約3倍の人数を検査します。20人が必要な試験なら60人を検査するイメージです。

多い日は1日に4試験、最大20人。5名の看護師で2試験のスクリーニング作業を進めていきます。

  1. 問診票の確認——ここで選択・除外基準に抵触していたらその場でお帰りいただきます
  2. 説明ビデオの視聴
  3. 医師による同意説明・同意取得
  4. 尿検査・心電図・血圧測定
  5. アルコール呼気テスト
  6. 医師の診察
  7. 採血
  8. 被験者管理室からの説明を受けて帰宅

シンプルに見えますが実は落とし穴だらけです。

検査の内容も順番もすべてプロトコール(治験実施計画書)で決まっています。心電図と血圧の前には安静時間が必要で、その長さも試験ごとに違います。バイタルや心電図が基準値を1つでも外れるとその方は脱落。だから測定前の安静時間の確認と測定値のチェックは本当に神経を使いました。

カルテには日付とサインが必須です。ALCOA(アルコア)に準じて記載していきます。

タバコやコーヒーなどの嗜好品、飲んでいる薬のチェックも厳しくみていきます。病棟の「重症度」とは違う種類の「正確さ」への緊張感がある仕事でした。

入所(病棟側)の仕事・山場は投薬日

入所は参加者の方が施設に泊まり込み、投薬と検査を受けます。

一番大変なのは投薬日。特にジェネリック(GE)の試験は採血の回数がとても多く、投薬後は分刻みのスケジュールで採血が続きます。ここでカギになるのが「許容時間」。採血の予定時刻に対して許される誤差が試験ごとに決まっていて、これを外すと逸脱になります。事前にプロトコールを読み込んでおくことが必要になります。

一方、夜は基本的に寝当直です。蓄尿がある試験では夜間のナースコール対応がありますが、病棟の夜勤とはまったく疲労度が違います。このあたりは別記事「夜勤=つらい」は病棟だけ|治験コーディネーターの夜勤のリアルで詳しく書いています。

ちょっと変わったところでは、マスバランス試験という蓄尿・蓄便がメインの試験もあります。薬が体からどう出ていくかを調べる試験で、こちらは臨床検査技師が大変なイメージがあります。臨床検査技師の手伝いもします、分取や混ぜ込みの作業です。

「試験担当者」になると仕事が変わる

経験を積むと試験ごとの担当者を任されます。担当者の仕事は、

  • 選択・除外基準のグレーな部分(基準値をどこまで「異常」とするか等)を製薬会社と事前に詰める
  • 検査に必要な物品の準備、タイムテーブル(TT)の作成
  • 当日に必要な看護師の人数の算出
  • 許容時間などプロトコールの読み込み

つまり、現場の実務に加えて「試験全体の設計」に関わるようになります。

実際のプロトコールではここまで決められている

「プロトコールに全部書いてある」と言われてもイメージしにくいと思います。そこで、実際に公開されている第I相試験の資料からどれくらい細かく決められているのかを少しだけ紹介します(薬剤が特定されないよう、内容は一般化しています)。

除外基準は生活習慣まで及びます。あるプロトコールでは「尿中薬物検査またはアルコール検査で陽性の者」「スクリーニング前3ヵ月以内に喫煙した者(噛みたばこ・貼付剤・ガムを含む)」「初回投与前60日以内に献血した者」「1週間に28単位を超えてアルコールを摂取している者」まで、除外基準として規定されています。中には「投与2週間前からグレープフルーツを摂取しないことに同意する者」という条件まであります(薬の代謝に影響するためです)。

私たちが問診票で嗜好品や飲んでいる薬をチェックするのは、この基準に1つでも触れれば参加できないからです。

採血の時刻も分単位で決まっています。あるプロトコールでは、採血のタイミングが「投与前、投与0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、6、8、12、16、24時間後…」と細かく指定されています。投薬直後は30分刻み。ここに「許容時間」(予定時刻から許される誤差)が加わるので投薬日の緊張感が伝わるでしょうか。

蓄尿・蓄便まで時間区分で規定。薬が体からどう出ていくかを調べるマスバランス試験では「尿は投与0〜4時間、4〜8時間…と区分ごとに蓄尿、便は24時間ごとに蓄便」と定められています。

少人数から慎重に。用量を増やしていく試験では「1つの群は8名(実薬6名+プラセボ2名)で、次の用量に進む前に14日以上あけて安全性データを確認する」と規定された例があります。新しい薬を人で試すことがいかに慎重に設計されているかが分かります。

看護師の仕事はこの分厚い文書を読み込み、そのとおりに正確に実行すること。「几帳面さが命」と書いた理由が少し伝わったでしょうか。

世界初・日本初の薬に立ち会える

I相には「ファーストインヒューマン(世界で初めて人に投与する試験)」や「ファーストインジャパニーズ(日本人で初めての試験)」があります。これらは安全のためまずn=2の少人数から始めて、安全性を確認しながら人数と用量を増やしていく。だから同じ試験が何度も重なって動きます。

海外ですでに認可されている薬でも日本での治験が必要な場合があります。「この薬、数年後に発売されるかも」という薬に最初に関われるのはこの仕事ならではの面白さでした。

どんな人が向いているか

12年やってみて感じた向き不向きです。

  • 正確さ・几帳面さがある人:カルテの日付サイン、許容時間、安静時間。「きっちり」が命の世界です
  • 文書を読むのが苦にならない人:プロトコールの読み込みは必須です
  • 段取り好きな人:流れ作業を回す組み立ての面白さがあります
  • 急変対応の緊張感から離れたい人:相手は基本的に健康な方。命の最前線とは別の働き方です

逆に「患者さんのケアそのもの」が一番のやりがいだった人は少し物足りなく感じるかもしれません。

まとめ:臨床経験はちゃんと活きる

治験看護師(CRC)の仕事は、採血・バイタル測定・心電図といった看護技術と正確さ・段取り力で成り立つ仕事です。ICUや救急で培った経験は検査値を見る目や異常への気づきとしてそのまま強みになりました。

「病棟の外で看護師資格を活かして働きたい」そう思ったとき、治験は現実的で面白い選択肢のひとつです。

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