「夜勤=つらい」は病棟だけ|治験コーディネーターの夜勤のリアル

治験CRC

はじめに

「夜勤」と聞くだけで体が重くなる看護師さんは多いと思います。仮眠も取れない忙しさ、鳴り止まないナースコール、いつ急変が起きるかわからない緊張感。その気持ちは痛いほどわかります。

私はその後、治験コーディネーター(CRC)として12年働きました。CRCの職場にも夜勤はありましたが、最初の夜勤で拍子抜けしました。

同じ「夜勤」という名前なのに中身がまるで別物だったんです。

この記事では第I相の治験施設で実際に夜勤をしていた私が、CRCの夜勤のリアルを正直にお伝えします。

前提:私が働いていたのは「第I相」の治験施設

治験には第I相〜第III相という段階があり私が主に働いていたのは第I相(フェーズ1)の施設でした。

第I相の対象は患者さんではなく健康な成人男性です。新しい薬の安全性を確認する段階なので、被験者さんは病気のない健康な方。ここが病棟との決定的な違いです。

つまり、夜に見守る相手が「容態の変わりうる患者さん」ではなく「健康な人」。

CRCの夜勤のリアル

実際の夜勤はこんな感じでした。

回数は月1回、多くても3回。ICU時代の月7回とは比べものになりません。

勤務は16:30入り、翌10:00明け。明けの翌日は必ず休みでした。「明け→翌日日勤」のような消耗するシフトはありません。

消灯は22時、起床は8時。被験者さんは健康な方なので生活リズムがきちんと決まっています。

巡回は3時間に1回。それで十分なんです。そして急変は施設全体でも年に1回あるかどうか。私自身は、12年間で一度も急変に立ち会いませんでした。ICU時代の「今夜も何か起きるかもしれない」という緊張感とはまったく別の世界です。

夜勤者は1人心細く聞こえるかもしれませんが実際は逆で、自分のペースで自由に動けます。誰かに割り込まれることなく淡々と仕事を進められる。この感覚は病棟では味わえませんでした。

食事は被験者さん用の仕出し弁当を食べられました(あくまで「検食」という形です)。投薬日のお弁当は豪華で、今半のすき焼き弁当が出たこともあります。朝食も同じく検食としていただけました。病棟の休憩室でおにぎりを流し込んでいた頃を思うとちょっとした役得です。

そして投薬日以外の夜は、本当に「何もない夜」もあります。

夜勤手当は1回13,000円でした。この負担でこの手当なら、正直悪くないと感じていました。

大変な面も正直に書きます

いいことばかり書いても信用されないと思うので、大変だった面も。

蓄尿試験のある夜は、夜間尿のたびにナースコールが鳴ります。そしてこの蓄尿、単なる回収作業ではありません。尿の成分からPK(薬物動態)、つまり「薬が体内でどう吸収・排泄されたか」を測定するためのデータなのでミスは絶対に許されません。たとえばAさんの蓄尿ボトルにBさんの尿を混ぜてしまう、そんなことは1回でもあってはならない世界です。夜中でも、頭は正確に働かせる必要があります。

投薬日の朝は早く、時間に厳しい投薬前の検査は1分1秒レベルの許容時間内に行う必要があり、朝は早くから準備に追われます。自分の担当試験の投薬日は早出につく必要があり夜勤は楽でも早出はそれなりにハードでした。

つまりCRCの勤務は「夜勤がつらい仕事」ではなく、「投薬日に山がある仕事」。山の日と何もない夜。メリハリがはっきりしています。

病棟の夜勤と比べてみると

項目病棟(ICU)の夜勤CRC(第I相)の夜勤
回数月7回(日勤より多い月も)月1〜3回
見守る相手容態の変わりうる患者さん健康な成人男性
急変いつ起きてもおかしくない私は12年で一度も立ち会わず
巡回常に気を張って頻回3時間に1回
ナースコール緊急の可能性あり蓄尿の回収が中心(ただしミス厳禁)
体制チームで慌ただしく1人で自分のペース
仮眠2時間取れないことも多い3時間に1回のラウンド以外、起床まで
食事かき込む仕出し弁当を検食(今半のことも)
生活リズム消灯後も気が抜けない基本:消灯22時・起床8時
シフト明け→日勤もありうる16:30入り→翌10:00明け、翌日は必ず休み
手当病院による1回13,000円(私の場合)

まとめ:「夜勤」という言葉にキャリアを狭めさせないで

「夜勤がつらいから、夜勤のない仕事を探そう」その気持ちはわかります。私もそうでした。

でも12年CRCをやって思うのは、「夜勤のあり・なし」だけで職場を選ぶと選択肢を狭めてしまうということです。同じ夜勤でも相手が健康な人か急変リスクのある患者さんかで、回数も、緊張感も、心と体への負担もまったく違います。

「夜勤=つらい」は病棟の夜勤の話。求人票の「夜勤あり」の文字だけで候補から外す前にその夜勤の中身をぜひ確認してみてください。

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